求人サイトで営業職を探していると、「アポインター募集」「クローザーへの昇格あり」「完全分業制」といった言葉をよく見かけます。
営業が未経験だと、どれが何をする仕事なのか、すぐにはつかめないものです。
はじめまして、真壁遼と申します。
家電量販店の販売員から住宅用の太陽光・蓄電池の訪問営業に転職し、アポ取りから契約までを7年間担当しました。
その後は人材紹介会社で、住宅設備やエネルギー業界を専門にキャリアアドバイザーを6年務め、今はフリーで転職相談を受けています。
相談に来る方からいちばんよく聞かれるのが、「アポインターとクローザーって、結局どっちが稼げるんですか」という質問です。
この記事では、それぞれの役割と、収入がどんな仕組みで決まるのかを、私の現場経験と公的な資料をもとに整理しました。
求人票で確かめておきたい点も、最後にまとめています。
目次
アポインターとクローザーは、営業の工程を分けた呼び名です
営業の仕事は、大きく分けると「お客さまと会う約束を取る」「話を聞いて提案する」「契約を結ぶ」の順に進みます。
これを1人で最後まで受け持つのが昔ながらの営業で、工程ごとに担当を分けるのが分業型営業です。
アポインターは「会う約束」を取る担当
アポインターの仕事は、商談の約束(アポイント)を取ることです。
電話で取る会社もあれば、私がいた業界のように家を1軒ずつ訪ねて取る会社もあります。
この段階では、商品を売りません。
「今度、担当の者が詳しくご説明に伺ってもよろしいですか」と約束をいただくところまでが役目です。
評価は、取ったアポの件数と、そのアポが実際の商談につながった件数で見られることが多いです。
クローザーは「契約」を結ぶ担当
クローザーは、アポインターが取った約束の場に出向き、提案して契約まで進める担当です。
商品の仕組み、価格、ローンや補助金の話など、扱う情報の量はアポインターよりぐっと増えます。
そのため、未経験からいきなりクローザーで採用されることは少なく、アポインターで経験を積んでから上がる流れが一般的です。
評価は、成約件数と契約金額で決まります。
間に「ヒアリング担当」を置く3分業の会社もあります
最近は、アポインターとクローザーの間にもう1段階を挟む会社もあります。
たとえば、太陽光パネルを設置済みのご家庭に省エネ機器を提案している株式会社エスコシステムズは、求人票で次の3つの役割を紹介しています。
| 役割(同社の呼び名) | 担当する仕事 |
|---|---|
| ラウンダー(RU) | ご家庭を訪問し、簡単なアンケートをしてアポイントを取る |
| アプローチャー(AP) | 設置時の費用や今の発電状況を聞き取り、合いそうな商材を紹介して契約担当につなぐ |
| クローザー(CL) | お客さまに合う省エネ機器を提案し、契約につなげる |
ラウンダーやアプローチャーは業界で統一された言葉ではなく、会社によって呼び方が変わります。
求人票で聞き慣れない呼び名を見かけたら、「どの工程を受け持つのか」に置き換えて読むと迷いません。
各役割の仕事内容や研修の流れは、エスコシステムズの採用情報ページに支店ごとの求人として載っています。
分業制の会社が役割をどう切り分けているのか、具体例として一度目を通しておくとイメージがつかみやすくなります。
法人営業の分業と、訪問営業の分業は別物です
「分業型営業」で調べると、法人向けの営業で使われる「インサイドセールス」「フィールドセールス」という言葉もたくさん出てきます。
工程を分ける考え方は同じでも、働き方はかなり違います。
| 比べる点 | 法人向けの分業 | 個人宅への訪問営業の分業 |
|---|---|---|
| 相手 | 企業の担当者 | 一般のご家庭 |
| アポの取り方 | 問い合わせや資料請求への電話・メール対応が中心 | 訪問や電話での声かけが中心 |
| 決まるまでの流れ | 先方の社内で稟議を通して決まる | ご家族で話し合って決まる |
法人向けの分業は、見込み客の情報を部署のあいだで受け渡すことを前提に組まれています。
訪問営業の分業は、玄関先で会った方の様子や会話の中身を、次の担当がどこまで引き継げるかで結果が変わります。
求人票に「インサイドセールス」とあるのか「アポインター」とあるのかで、毎日の動き方はまったく違うと考えてください。
分業型営業のよいところと、つまずきやすいところ
未経験者にとってのよいところ
私が訪問営業に入ったとき、最初の3か月はアポ取りだけをしていました。
商品の細かい仕組みを全部覚えていなくても、決まったトークと流れを身につければ現場に出られたのは、ありがたかったです。
- 覚えることが段階的なので、未経験でも早く現場に出られる
- 先輩の商談に同席して、契約までの流れを横で学べる
- 自分がどの工程に向いているかを、実際にやりながら確かめられる
接客や販売の経験がある方は、アポ取りの段階で力を出しやすいと感じます。
初対面の相手に身構えられずに話を始める力は、量販店の売り場でも玄関先でも変わらないからです。
つまずきやすいところ
分業ならではの難しさもあります。
- 自分の収入が、ほかの担当者の成約に左右される
- 引き継ぎがうまくいかないと、お客さまに同じ説明を何度もさせてしまう
- アポ取りだけを長く続けると、提案する力がなかなか育たない
いちばん大きいのは1つ目です。
アポインターがどれだけ質のよい約束を取っても、クローザーが契約できなければ自分の成果にならない仕組みの会社は少なくありません。
2つ目には、私にも苦い経験があります。
お客さまから聞いた「以前、屋根の点検で不安な思いをした」という話を、クローザーに伝え忘れたことがありました。
商談の場で同じ話を一から聞き直すことになり、お客さまの表情が曇ったのを今でも覚えています。
収入は「固定給+インセンティブ」で考える
インセンティブが誰の成果で出るかを確認する
分業型営業の収入は、毎月決まった固定給に、成果に応じたインセンティブ(歩合)が上乗せされる形が多いです。
ここで確かめたいのは、インセンティブが「誰の、どの成果」で発生するのかという点です。
先ほどのエスコシステムズの求人には、クローザーが契約すると、その案件に関わったラウンダーとアプローチャーにもインセンティブが出ると書かれています。
上限はなく、1件の契約をチームで分け合う考え方です。
同社の東京支店の求人には、元飲食店店長の社員の例も載っています。
入社1年の時点で、月間40件の商談のうち22件を成約担当につなぎ、そこから11件が成約して、インセンティブは42万円だったそうです。
ただし、試用期間中(1〜3か月)はインセンティブがないことも明記されています。
入社直後の数か月は固定給だけで暮らせるかを、先に計算しておくと安心です。
固定残業代の書き方を見る
固定給の中身も見ておきましょう。
営業職の求人では、月給に「固定残業代(みなし残業代)」が含まれていることがよくあります。
厚生労働省のリーフレット「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」では、若者雇用促進法に基づく指針をもとに、求人票へ次の3点をすべて書くよう求めています。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代が何時間分で、いくらなのか
- その時間を超えた残業などに、割増賃金を追加で支払うこと
同社の東京支店の求人を見ると、「基本給18万円、固定残業代43時間分6.7万円《超過分別途支給》」と、3点がそろって書かれています。
反対に、「月給30万円以上(みなし残業含む)」のように時間数も基本給もわからない書き方なら、面接で内訳を聞いてください。
「完全歩合」の求人は保障給と最低賃金を確認する
なかには「完全歩合制」「固定給なし」をうたう求人もあります。
雇用契約で働く場合、成果がゼロの月は給料もゼロでかまわない、という話にはなりません。
労働基準法第27条は、出来高払制(歩合給)で働く人に、労働時間に応じた一定額の賃金を保障するよう使用者に義務づけています。
厚生労働省の「スタートアップ労働条件」のQ&Aでは、保障給は少なくとも平均賃金の6割程度が妥当とされています。
固定給が賃金のおおむね6割以上を占める場合は、この規定の対象外です。
同じQ&Aには、歩合給にも最低賃金法が適用され、時給に換算して最低賃金を下回ってはいけないことも書かれています。
固定給と歩合給がある場合は、それぞれを時給に直して足した額で比べます。
気をつけたいのは、業務委託契約の求人です。
ここで紹介したルールは雇われて働く人を守るためのものなので、契約の形が変われば前提も変わります。
「正社員」「契約社員」「業務委託」のどれなのかは、求人票でいちばん最初に確認してください。
訪問営業の分業では、守るべきルールも工程ごとに違います
ご家庭を訪問する営業を分業でおこなう場合、特定商取引法のルールがそれぞれの工程に関わってきます。
消費者庁の「特定商取引法ガイド」をもとに、工程ごとに整理すると次のとおりです。
| 工程 | 主に関わるルール |
|---|---|
| アポイント取得 | 勧誘の前に、会社名・契約の勧誘が目的であること・商品の種類を告げる |
| アポイント取得から商談まで | お客さまが断ったら、その場で勧誘を続けたり、後日あらためて勧誘したりしない |
| 契約 | 申込みや契約のときに、法律で決められた書面を渡す |
| 契約後 | 書面を受け取った日から数えて8日以内なら、お客さまはクーリング・オフできる |
アンケートや点検をきっかけに話を始める場合でも、勧誘に入る前に会社名と目的、商品の種類を伝える必要があります。
アポインターは、会社の看板を背負って最初にお客さまと向き合う立場です。
国民生活センターの発表(2021年6月公表)によると、家庭用蓄電池に関する相談件数は、2016年度の325件から2020年度には1,314件まで増えました。
相談事例には、電力会社の関連会社を名乗られたケースや、太陽光パネルの無料点検で訪れた事業者に蓄電池を勧められたケースが挙がっています。
こうしたルールを守る会社を選ぶことは、働く側が自分の身を守ることにもつながります。
面接では「入社後にどんな法令の研修があるか」「断られたご家庭への再訪問をどう扱っているか」を聞いてみてください。
答えが具体的に返ってくる会社なら、現場でも同じ基準で動いている可能性が高いと私は見ています。
求人票と面接で確かめておきたいこと
ここまでの話を、確認する項目としてまとめます。
- 雇用契約か、業務委託契約か
- インセンティブは誰の、どの成果で発生するのか(アポの件数か、成約か)
- 試用期間中のインセンティブの扱い
- 固定残業代の時間数と金額、超えた分の支払い
- アポインターからクローザーに上がる条件と、かかる期間の目安
- 特定商取引法などのルールを、入社後にどう教えているか
キャリア相談で私が必ず伝えているのは、「年収の上限」より「最初の半年の収入」を先に見てほしいということです。
求人票の「平均年収○○万円」には、すでに成果を出している先輩の数字も含まれています。
未経験で入ったばかりの自分がどこからスタートするのかを、面接で具体的に聞いておきましょう。
それだけで、入社後のギャップはかなり小さくなります。
まとめ
アポインターとクローザーの違いと、収入の考え方を振り返ります。
- アポインターは会う約束を取る担当、クローザーは契約を結ぶ担当で、間にヒアリング担当を置く会社もある
- 法人向けの分業と個人宅への訪問営業の分業は、相手も毎日の動き方も違う
- 収入は固定給+インセンティブが基本で、インセンティブが誰のどの成果で出るのかを確かめる
- 固定残業代は3点の表示、完全歩合なら保障給と最低賃金を確認する
- 訪問営業では、特定商取引法のルールが工程ごとに関わる
最初に「どっちが稼げるのか」という質問を紹介しましたが、私の答えはいつも同じです。
入口はアポインターでも、引き継ぎを丁寧にこなせる人は、クローザーに上がってからも伸びていきます。
分業制は、未経験の方が営業の仕事を一段ずつ覚えていける仕組みです。
求人票の言葉の意味がわかれば、自分に合う会社かどうかも見えてきます。
気になる会社があれば、この記事のチェック項目を手元に置いて、面接で遠慮なく聞いてみてください。