対談・北の縄文
藤宮峯子さんと大島直行さん、お二人の対談を5回に分けて連載いたします。
藤宮峯子【ふじみや・みねこ】さん
札幌医科大学解剖学第二講座教授。滋賀医科大学大学院修了。滋賀医科大学解剖
学第一講座准教授を経て2008年から現職。奈良県生まれ。
大島直行【おおしま・なおゆき】さん
伊達市噴火湾文化研究所長。遺跡の整備、調査などの文化財保護や啓発事業を含
む総合文化行政に積極的に取り組む。釧路管内標茶町生まれ。
※以下は、お二人の対談の要旨をまとめたものです。(敬称略)
(大島)
私は、17年間札幌医大の解剖学教室で人類学が専門の三人の教授に仕えましたが、札幌医科大学初の女性教授である藤宮先生が来られ、私とはあまり縁がないのではと思っていたら、縄文で意気投合しました。不思議なことです。
先生は、縄文の「心」に感動したと伺っております。ご自分が赴任した教室には縄文人骨がずらっと並び、アイヌ民族の方々の資料が沢山あって、その人たちが語りかけてくるのだとお聞きしました。先生のご専門は再生医療で、まさに日本の最先端医学をやっておられますが、今日は、縄文人と健康についてのお話をしようと思います。
糖尿病、メタボについて
(藤宮)
先ほど石森秀三先生が、札幌に来て10キロ痩せられたとおっしゃいましたが、非常に良く分かります。恐らく、この北海道の美しい自然環境に体が適応して、精神的な高揚感があるのではないでしょうか。何か楽しいことがあると、頭の中でセロトニン、ドパミン、オキシトシンなどのホルモンが増え、それが身体に良い影響を与えて脂肪細胞の代謝が非常に活性化するわけです。これは北海道でしか起こり得なかったことで、関西におられたらそのままメタボの道をまっしぐらに進まれたのではないかと思います。
メタボには二つの理由があり、一つはストレスなど精神的な因子と、もう一つは食べ過ぎです。この食べ過ぎるということが我々の体に悪い影響を及ぼすわけで、過剰なエネルギーを摂るということは、糖尿病をはじめ生活習慣病を引き起こす原因になると言われています。
アメリカとかヨーロッパに行きますと肥満体の方が多いのが目につきますが、日本人の場合、糖尿病は確かに多いのですが外国で見られるような肥満体の人はいません。狩りをして脂肪の多い食事を取っていた西洋人に比べて、東洋人は元々「節約遺伝子」を体の中に持っており、飢餓状態に体が適応するように出来ているわけです。
メキシコにピマインディアンという種族がいますが、なんとその種族の三分の二が糖尿病なのです。何故こんなことになったかといいますと、元々節約遺伝子を持っているところにアメリカ大陸でファストフードのハンバーガーなどアメリカ人と同じ食生活をしたわけです。このため非常に高い確率で糖尿病になる。糖尿病の研究をするなら、ピマインディアンで、と言われています。
日本人の食生活も欧米化が進んでいますが、我々の体に節約生活に慣れた遺伝子がプログラムされているために、ちょっとした油断をすると生活習慣病になり易いのです。
この点、縄文人は限られた自然環境の中で食べ物を確保したわけですから、食べ過ぎはあり得ない。ですから縄文の生活は非常に健康的な生活であったと思います。肥満になるぐらい飽食になったのはここ数十年の話ですので、古代人は肥満で起こる糖尿病や動脈硬化は少なかったと思います。





