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日本人になった祖先たち

book3 図書名:日本人になった祖先たち
著者:篠田謙一(国立科学博物館人類第一研究室長)
出版社:NHKブックス
発行:2007年2月 定価:920円+税

自分のルーツはどこなのか、日本人はどこからやってきたのか?

それはミステリアスで大いに好奇心をそそられるテーマであるし、また自らの存在はどういう流れの中にあるものなのかということへの問いでもあり、遺跡から発見された人骨、言語の比較や語り継がれた神話などから様々な分野の専門家が研究し、熱い議論が繰り返されてきた。

書の副題は、「DNAから解明するその多元的な構造」であり、DNA分析によって日本人が辿ってきた道を読み解こうとするものである。著者の篠田氏は、かつてNHKの特集番組で日本人の起源や遺伝子の多様性について分かりやすく解説したことがあるので、記憶されている方も多いと思う。

ミトコンドリアDNAは母親だけから子に受け継がれるもので、共通の配列を持つグループを「ハプログループ」と呼ぶ。遺伝子が変化する時間からそのグループが発生した時期を推定することによって、次のようなことが明らかになっている。

・すべての現生人類のルーツは20~10万年前のアフリカに遡る
・現生人類は7~6万年前、アフリカを出て全世界に広まった
・ネアンデルタール人、ジャワ原人などの先行人類はすべて絶滅した

はじめて日本に降り立った外国人は日本人の顔が多様性に富んでいることに驚くと言われ、DNAレベルでもこうした印象が裏付けられる。日本はもっともミトコンドリアDNAのデータ蓄積が進んでいるが、日本人の4割近くを占める最大のグループは中央アジアから東アジアに広がり、3万年以上前、最終氷期がピークを迎える頃に南回りでアジアに入ったグループから派生したとされる。

技術の飛躍的な進歩により、縄文人の人骨もDNA分析の対象となりうる。同じ縄文人でも関東の人骨からは東南アジアや環太平洋に広がる遺伝子が見られるのに対し、北海道の縄文人では北方ルートで東アジアに入ったグループが大多数であり、ルーツを異にする人々が縄文文化を共有しながら1万年以上にわたって日本列島に暮らしていたということになる。

また、縄文人と共通の遺伝子はアメリカ先住民にも見つかっており、日本列島が人類のグレートジャーニーの途上に位置していたことが分かる。

アイヌの人々については、単純に縄文人の延長ではなく、オホーツク人に結びつく可能性のある遺伝子が見られるとしており、アイヌ民族はこの島と海を舞台としたダイナミックな人の動きの中から形成されたことが、DNAレベルで確認されつつある。

今後、父親から受け継がれるY染色体についての研究が進めば、さらに精度の高い人類の歩みが明らかになるとのことだが、本書は、厳しい環境変化に耐えながら海を渡り山脈を越えてフロンティアを目指し、混血や闘争を繰り返してきた私たちの祖先の長い長い旅をイメージさせてくれる。

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