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縄文の思考

book1図書名:縄文の思考
著者:小林達雄(國學院大学名誉教授)
出版社:ちくま新書
発行:2008年4月
定価:700円+税
縄文人は「土器を用いた煮炊き料理がもたらした食料事情の磐石の安定化」などによって旧石器時代の遊動的生活から定住的生活への転換を成し遂げた。土器は、人間が土を焼くという化学的変化によって獲得した画期的な容器で、縄文土器は世界で最も古い土器の一つだが、著者はその「造形的革新性」を重視する。口縁が突起をもったり波状にうねったりする造形は縄文時代を通して継承されたが、これらは容器には不必要なばかりか邪魔でさえある。
縄文土器は、手で操作する調理や貯蔵のための道具であるとともに、縄文人が頭の中で操作する精神文化の道具でもあった。このように著者は、遺跡や遺物そのものを見ているだけでは分らない部分に光を当てているが、とりわけ形の残らない「言葉」に関する記述は極めて興味深い。縄文人は日本列島の中で縄文語を話し、一定の世界観を共有していたが、距離的には近くても言葉の通じない樺太や朝鮮半島は異なる文化圏だったというのが著者の考えである。
「津軽海峡は、本州と北海道を隔てる難所であることは言うまでもない。…それにもかかわらず、縄文時代を通じて、頻繁に往来し、いつも海峡を挟んで一つの文化圏を形成していた。ところが、北海道の北端、宗谷岬から樺太の丘が見えるのに、縄文人も、樺太先住民も互いに一向に往き来していない。…宗谷海峡と朝鮮半島を漕ぎ渡らなかった理由は航海術の問題ではなく、別にあったとみなくてはならない。それこそがコトバの問題以外のなにものでもない。」
本書では、縄文人の心、精神文化を論じる際、随所でアイヌ文化との比較がなされる。また、北海道の遺跡・遺物も引用されており、縄文文化を知る上で、北海道の縄文から続縄文、そしてアイヌ文化へとつながっていく固有の歴史が持つ意味の大きさが改めて感じられる。

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